仕事の未来世界委員会・論点概要シリーズ1-12

2017年8月、仕事の未来世界委員会の設置により、ILO100周年記念イニシアチブ「仕事の未来」は第2段階に入りました。次の6つの主要なテーマ領域は、保障、公平、繁栄を実現できる仕事の未来を確保するために検討が必要な課題に重点を置いています。論点概要シリーズ1-12は、それぞれのテーマ領域に含まれる主要課題となります。

領域1:個人と社会にとっての仕事の役割

仕事には一体性のある社会で個人のつながりをつくるという役割もあります。変化する仕事のなかでこれらの役割をよりよく果たせるために、現在の変化のプロセスをどのような形にすればよいか論じています。
概要#1 「個人、仕事と社会」

仕事は物理的ニーズの充足に資するだけでなく、個人の自己実現にも関連しています。さらに、ILOの実施した「若者と仕事の未来調査」を用いて、変わりゆく仕事のあり方に伴い、労働市場に参加する若者がどのようなことに悩み、また何を期待しているのかを分析しています。また、若者がその親よりも豊かな生活を送る可能性は高いかどうかについて論じています。
概要#2 「若者の状況と期待への取り組み」

領域2:全世界的に浸透している仕事の世界における女性にとっての不平等への終止符

将来の労働者の健康と教育、そして高齢者の増大に対処する上で、ケアは欠かせないものです。またケア労働は、ジェンダーの平等を伴う仕事の未来を確保するための中心課題となっています。今後増大の一途をたどるケアのニーズを誰が充足するのか。またケア政策を推進する重要性について論じています。

概要#3 「包摂的な労働市場とジェンダーの平等に向けたケアへの取り組み」

現在、女性の労働参加率は多くの国で高まっているものの、依然として雇用に占める割合や報酬、労働条件などで弱い立場に置かれることが多く、女性のエンパワーメントをいかに実現するかが重要となっています。非公式な経済で働く女性は、貧困世帯に属す傾向があることから、そのような女性の声を反映するため社会がどのように取り組む必要があるのか論じています。概要#4 「インフォーマル経済で働く女性のエンパワーメント」

領域3:社会・環境・経済開発のための科学技術

2000年代初頭に、インターネットの成長とともに「プラットフォーム経済」が登場しました。インターネット接続があれば、世界中にどこでも簡単にクラウドワークスを行うことができるため、多くの政府関係者や労働者、さらには企業も大きな期待を抱いています。クラウドワーカー調査と既存の文献から、プラットフォーム経済に関する既存の研究に関して取りまとめています。概要#5 「プラットフォーム経済における仕事の質」

デジタル化及び自動化の進展は、仕事の質・量の両面に大きな影響をもたらすとみられています。新技術により、特に開発途上国にとっては先進国に追いつく機会が生まれますが、このような期待の反面、雇用の喪失をもたす潜在的可能性を持っており、雇用における二極化を招く恐れもあります。技術革新による利益をいかに幅広く共有するべきなのかを論じています。概要#6 「技術の仕事に対する質的・量的影響」

領域4:教育の各段階における変化の管理

仕事の世界が深刻かつ広範に変化しているにつれ、将来の労働市場の実効性は、労働者の移行をどのように容易に促進し、生じうるリスクをどのように緩和するかに依存しています。そのために、社会的保護などの包括的な一連の政策枠組み及び、労働者が生涯学習や育児休暇や介護休暇などの時間を確保できることの重要性について論じています。
概要#7 「ライフサイクル全体を通じた移行の管理」


仕事の未来においては生涯学習と機動的かつ柔軟な訓練システムが必要です。そのために、人々がデジタル化をはじめとする変化の要因についていけるようにする必要があります。こうしたニーズに対応するため、技能開発システムをどのように転換しうるか、またそのための財源及び政府、企業、労働者それぞれの責任について論じています。
概要#8 「未来の労働力のための技能政策とシステム」

領域5:成長・開発の新たな手法

経済の原動力であり、雇用の創出者である企業の生産能力をどのように活用すれば社会の貢献につながるでしょうか。利潤最大化という企業の正当な目標を追求しながら、持続可能な包摂的成長という社会への貢献に活用するために何が必要なのか論じています。
概要#9 「包摂的成長のための新たなビジネスモデル

グローバル・バリューチェーン(GVC)は特に開発途上国において、成長の原動力であるとともに、雇用創出の重要な牽引役でもあります。GVCの負の側面にも配慮した上で、GVCへの関与が、包括的で持続可能な開発の将来に向けて果たす意味合いに焦点を当て、将来の趨勢を検討しています。
概要#10 「包摂的で持続可能な未来のためのグローバル・バリューチェーン」

領域6:仕事の統治の未来

仕事の世界の変容は、確立された労働ガバナンスの制度と方式に未曾有の課題を突きつけています。現在起こりつつある変化に取り組むための一助として、労働ガバナンスにおける新たな方向性が、将来のガバナンスの変遷を占ううえで、何を示唆しているのかを探索しています。概要#11 「労働ガバナンスの新たな方向性」

社会的保護は、現代の経済社会の重要な特徴であり、社会的構造の重要な部分でもあり、公平と社会的正義を達成するための重要な手段として機能します。しかし世界人口の大多数は社会的保護をまったく、または殆ど受けられていません。このような現状をもとに、社会的保護の未来について論じています。
概要#12 「仕事の未来に向けて普遍的社会的保護を確保するための革新的手法」