児童労働反対世界デー
児童労働反対世界デー(6月12日):2021年のテーマは「今行動を起こして児童労働に終止符を」
2021年は国連の定める児童労働撤廃国際年です。そこで、2021年の世界デーでは、国際年に向けて取られている行動に焦点が当てられます。新型コロナウイルス危機が進歩を後戻りさせることを脅かしている中で迎える今年の世界デーはまた、「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」の全加盟国による批准が達成されてから初めて迎える世界デーでもあります。
世界デーに先立つ6月10日に、ILOと国連児童基金(UNICEF)は8.7連合の後援の下、児童労働に関する新世界推計と2016~20年の動向を示す報告書を発表しました。報告書は、児童労働に従事する子どもの数が4年前より840万人増えて推定1億6,000万人に達した上、新型コロナウイルスの影響でさらに数百万人が児童労働に陥る危険があると記しています。
第109回ILO総会のサイドイベントとしてILOとUNICEFが共催し、「今行動を起こして児童労働に終止符を」と題して2021年6月10日に開かれた児童労働反対世界デー記念ハイレベルイベントでは、当日発表された新世界推計と今後の行程表を巡る話し合いが行われました。児童労働撤廃国際年を記念して実施された児童労働反対音楽コンクールの受賞者の発表も行われました。
ILO、UNICEF、国連食糧農業機関(FAO)の事務局長、米国労働長官、国際労働組合総連合(ITUC)書記長、国際使用者連盟(IOE)事務局長、ノーベル平和賞受賞者で児童労働活動家のカイラシュ・サティヤルティ氏が参加した第1部では、新児童労働報告書を巡る意見交換が行われました。ガイ・ライダーILO事務局長とヘンリエッタ・フォアUNICEF事務局長が報告書の内容とこの問題の解決に向けた具体的な取り組み提案を紹介した後、屈冬玉FAO事務局長、ロベルト・スアレス・サントスIOE事務局長、シャラン・バロウITUC書記長が、児童労働が最も多く見られる農業から児童労働をなくす方法、この問題に企業がどう関われるか、労働組合の役割などについてそれぞれの立場から見解を表明しました。米国のマーティ・ウォルシュ労働長官からは、米国の決意を示した上で、一緒に取り組めば、子どもたちが学び、自らの潜在力を発揮できる世界を形成できるとして努力の結集を呼びかけるメッセージ動画が届けられました。カイラシュ・サティヤルティ氏もメッセージ動画で、この数字はショッキングで受け入れられないとして、搾取され続けている子どもたちへの謝罪の言葉と共に世界が豊かになっている中での問題悪化への怒りを表明した上で、子どもたちに公正な分け前をと呼びかけました。
第2部では、タンザニア、ペルー、レバノン、インドの若者活動家が、マダガスカルの労働問題担当大臣、英国企業の最高経営責任者、アルゼンチンの労働組合代表といった政労使及び8.7連合議長に直接質問を投げかける形で、児童労働撤廃国際年に際しての取り組みと持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.7の達成に向けた今後の道のりが議論されました。
マダガスカルのジゼル・ラナンピ労働・雇用・公務・社会法大臣は、UNICEFの青少年アドボケート(唱道者)であるタンザニアのラファエル・デニスさんからの質問に答えて、マダガスカルの取り組みを紹介した上で、若者を含む幅広い人々を巻き込んだパートナーシップの大切さを強調しました。建設資材メーカーであるマーシャルズ社のマーティン・コフィー最高経営責任者は、今は弁護士になっているインドの元債務児童奴隷のアマール・ラルさんの質問に答えてサプライチェーンにおける取り組みを紹介しました。アルゼンチン労働総同盟(CGT)のスサーナ・ベアトリス・サントミンゴ国際顧問は、ペルーのアンドレア・バジェ・ビジェガスさんの質問に答えて、この危機を機会ととらえ、増大を示している児童労働問題に改めて幅広く注力を求めていくことを提案しました。シリア難民としてレバノンで働いていた元児童労働者のラハフ・アルカレドさんの質問に答えた8.7連合のアヌーシェ・カルバル議長は、最優先課題である教育を中心にした子どもの取り組み方などを紹介しました。
最後に児童労働反対音楽コンクールの受賞者発表と受賞者の演奏が行われました。50カ国200点以上の応募の中から、ラウラ・パウジーニさん、A.R.ラフマーンさん、ラルフ・ジョンソンさん、フアン・ディエゴ・フロレスさん、ロクア・カンザさんといったクラシックからポップスに至る音楽界のそうそうたるメンバーで構成された審査員団に選ばれたのは、グローバル部門がブルキナファソのベルニス・ピトロイパさん、草の根部門がジンバブエのMCAZスチューデンツ・バンドでした。ベルニスさん受賞の決め手は、綿花畑で働く児童労働者のこの境遇から抜け出したいとの思いを表現した強い歌詞であったとされます。MCAZスチューデンツ・バンドも軽快なメロディーに乗せて、児童労働反対の主張を表現しています。
イベントを通じて、教育、社会的保護、パートナーシップの重要性が強調され、それぞれができることを通じて、今一層の努力をもってコロナ禍の影響によってさらに増えていると推測される児童労働問題に対処し、皆で一緒にターゲット8.7を達成しようとのメッセージが強く表明されました。
6月10日にはILO総会のデイリーショーでも「児童労働をなくす方法」をテーマとし、サイドイベントのハイライト紹介や児童労働反対音楽コンクールの受賞者発表に加え、視聴者からの質問に対する回答も交えつつ、マーサ・ニュートンILO政策担当副事務局長、ベラ・パケッチ=ペルジゴンILOガバナンス・三者構成原則局長、フィリップ・バンフイネゲンILO就労基本原則・権利部長、総会サイドイベントに参加したインドのアマール・ラルさんへのインタビューを通じて、当日発表されたILOとUNICEFの新児童労働世界推計の内容紹介、児童労働に終止符を打つことを目指すSDGのターゲット8.7を達成するために必要な行動を検討しました。ILOがコンゴ民主共和国で実施しているコバルト採掘業から児童労働をなくす取り組みの紹介も行われました。
マーサ・ニュートン政策担当副事務局長とベラ・パケッチ=ペルジゴン・ガバナンス・三者構成原則局長は、アジア太平洋及び中南米・カリブのように順調に減少が進んでいる地域もあれば、サハラ以南アフリカのように絶対数でも子どもに占める割合でも増加が止まらない地域があることや懸念すべき傾向として5~11歳の幼い層で児童労働者が増えていることなど、ILOとUNICEFの新児童労働世界推計の主なポイントを紹介した上で、児童労働というグローバルな問題に取り組む上での8.7連合のような世界的パートナーシップの重要性を強調し、法や政策の整備支援から地域社会による監視システムの構築、大人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)確保を通じた貧困対策、子どもたちへの教育・訓練の提供などといった各国政労使との協力を土台とした児童労働・強制労働撤廃国際計画(IPEC+)を通じたILOの様々な活動を紹介しました。
2016年にアムネスティ・インターナショナルからコバルト採掘業における児童労働の存在を指摘されたコンゴ民主共和国は迅速に対応し、省庁間会議や全国戦略を設けて取り組みを開始しました。ILOは米国労働省の支援を受けて、同国でコバルトを中心とした鉱業における児童労働撲滅に向けた政府、市民社会、民間セクターを対象とした能力構築活動としてCOTECCOプロジェクトを展開しています。同プロジェクトのジョゼ=ブランディン・オンゴット主任技術顧問(CTA)は、政策・法的枠組みの強化など政府との協力に加え、民間セクターとも連携してサプライチェーン(供給網)におけるモニタリング・是正の仕組みの改善、基準遵守、対話促進を図っているプロジェクトの活動を紹介した上で、児童労働撤廃国際年に際し、政府が今年6月16日にモニタリングやフォローアップの仕組みの構築などを含む取り組みの誓いを発表する予定であり、ILOがその実施を支援することになると報告しました。
フィリップ・バンフイネゲン就労基本原則・権利部長は、2025年までに児童労働をなくすというSDGのターゲット達成に向けて活動を加速化することを目指す児童労働撤廃国際年の意義を説明し、既に300以上の政府、企業、労使団体などから様々な革新的な取り組みの誓いが集まってきていることを紹介しました。代々続く債務奴隷の一家の出身であり、自らも児童労働に従事していたものの、2001年にカイラシュ・サティヤルティ氏に救われて弁護士になるという夢を2018年に実現できたとの自身の経験を語ったラル弁護士による行動の呼びかけに応え、バンフイネゲン部長は、貧困対策として社会的保護を全ての人に届けることや非公式経済から公式経済への移行、質の高い教育の確保などの機能する政策を紹介しました。児童労働対策を国家の優先課題とする方法を問われたラル弁護士は、自分の子どもや弟妹が児童労働に従事していたらといったように問題を自分事として考え、共感することの大切さを訴えました。
2021年は、世界デーを中心に6月10~17日を世界デー行動週間とし、この期間に実施されるイベントや活動を通じて、国際年に際して関係者らが発表している「2021年の行動の誓い」の進捗状況を紹介する機会を提供しました。
2021年はアルゼンチンで第4回児童労働世界会議が開かれた2017年から4年、持続可能な開発目標(SDG)のターゲット8.7が掲げる児童労働撤廃目標年の2025年まで4年という中間点に位置します。今年の世界デーと年間を通じて世界中で実施される活動は、南アフリカが受入国となって2022年に開かれる次の児童労働国際会議に寄与することが期待されます。
本ページは児童労働反対世界デー英語サイトの簡易版です。最新の動きや、より詳しい情報は英語サイトをご覧ください。