バーチャルサミット
新型コロナウイルスと仕事の世界ILOグローバルサミット
新型コロナウイルス(COVID-19)が仕事の世界に与えている影響に対処し、ウイルスの大流行が一段落した後に、より良い仕事の未来を構築する方法について検討することを目的として、五つの地域イベント、三つのグローバルなイベントで構成されたサミットには世界中から政労使代表が参加しました。演説者は国家元首・政府首脳54人、アントニオ・グテーレス国連事務総長などの国連・国際機関のトップ5人を含み、98カ国275人に上りました。サミットからは、「新形コロナウイルス後には、全ての人にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が確保された、より良い仕事の未来が必要であり、私たちは結束することによってこれを達成できる」との統一したメッセージが発せられました。
7~9日のグローバル・イベントに先立ち、1~2日には五つの地域別イベント(1日-アラブ諸国、欧州、2日-アジア太平洋、アフリカ、米州)が開催されました。2日のアジア太平洋地域のイベントでは、域内労使を代表して、日本経済団体連合会(経団連)の松井博志労働法制本部参事(ILO理事)と国際労働組合総連合(ITUC)アジア太平洋地域組織の吉田昌哉書記長が新型コロナウイルス後の仕事の世界のあり方について見解を述べました。7日の「地域の日」には、新型コロナウイルスに対するILOの対応を示す動画や各ILO地域総局長へのライブ・インタビューを交えて、五つの地域別イベントのハイライトが紹介されました。8日の「グローバル・リーダーの日」には、ILO加盟国の国家元首や政府首脳、使用者及び労働組合の世界的指導者が、ウイルスの世界的流行が仕事の世界にもたらしている課題と機会について論じました。日本からは日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長が参加しました。9日の「ILO加盟国政労使の日」には、加藤勝信厚生労働大臣など加盟国の大臣、労使リーダーが集い、前日までのイベントを振り返り、ウイルスの世界的大流行の中で「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を実行していく方法について話し合いが行われました。議論の焦点は初期段階のコロナ禍が仕事の世界にもたらした緊急かつ即時の課題、効果が立証されている対応策の紹介、そしてより良い立て直しのプロセスに当てられました。
背景
新型コロナウイルスは2020年前半だけで40万人以上の命を奪い、世界を近年で最も深刻な人的、経済的、社会的危機に陥れました。仕事の世界にも甚大な影響があり、ウイルスに対応して世界中で行われた大規模な職場閉鎖は今年第2四半期に世界の労働時間を10.7%減少させたと見られます。これは週48時間の労働時間換算で3億500万人分の雇用の喪失に当たります。影響が当初最も大きかったのはアジア太平洋地域でしたが、今は米州に移り、これに欧州及び中央アジアが続いています。
ウイルスは人を差別しませんが、仕事の世界では不平等の結果を露わにするものとして、最も不利な立場にあり、最も脆弱な人々が最も残酷な形で最も深刻な影響を受けています。非公式(インフォーマル)経済で生活の糧を得ている人は就労者の10人中6人を上回りますが、この20億人中16億人が生計の危機に直面しています。ウイルスの影響は男女によって異なり、不均等に多くの女性がサービス業のような最も影響が深刻な産業部門、そして保健医療などの最前線でウイルスに立ち向かう職業に就いています。ウイルス流行以前から労働市場における状況が相当に困難な場合が多かった若者の展望も急速に悪化しました。訓練や教育の大幅な中断に加え、ウイルス流行以前に働いていた若者の6人に1人が今は働いておらず、働いている場合でも労働時間は23%減となっています。
企業は、とりわけたとえ短期間でも活動しなかった場合には乗り切れるだけの資金がほとんどない零細・中小企業は大きな不確実性に直面しています。卸売・小売業及び自動車修理業、製造業、飲食・宿泊業、不動産及び事業支援・事務管理活動といった、影響が最も深刻な4部門だけで4億3,600万社以上の企業に深刻な事業中断の高いリスクがあると見られます。
世界経済の先行きは大きな不確実性に包まれており、最近の予測では第二次世界大戦以来最大の5~8%の経済縮小が見込まれています。世界銀行は7,100万~1億人が極度の貧困状態に陥り、近年見られた歩みが後退するとの予測を示しています。
ILOは国際労働基準を基礎として、以下の四つの柱による危機対応を提案しています。
柱1 経済・雇用の刺激
| 柱2 企業、雇用、収入の支援
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柱3 職場における労働者の保護
| 柱4 社会対話に頼った解決策探求
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資金的な制約や迅速な支援提供の壁となっている就労形態の多様化、必ずしも適正な労働者の保護具や保護手順が確保されていないこと、国際的な連帯や協力の欠如などといった制約はあるものの、ILOが集めている各国の政策対応に関する情報によれば、以上の4分野における活動は、実行された場合には効果的であることが証明されています。
この状況から抜け出した時の「新たな日常」に関する議論が出始めていますが、回復プランには最初から「より良い日常」に向けた基盤を敷設すべきです。その点で、人間を中心に据えた取り組みを提唱する「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を活用して、差し迫った課題や問題に対応しつつ、より良い立て直しのための過程を始動させることが提案されています。
グローバルイベント議題
以上のような前提に立ち、グローバルサミットでは以下のようなテーマを巡る話し合いが行われました。
- 生産的な完全雇用と全ての人のディーセント・ワークを支える新型コロナウイルス対応
新型コロナウイルス対応が持続的かつ包摂的で持続可能な成長、生産的な完全雇用、全ての人のディーセント・ワークを促進する方法。世界経済を迅速に景気後退から引き出し、公正なデジタル移行、人口遷移、環境移行の課題対応に進む路線に乗せるように対応策を設計する方法。
コロナ禍における経験に照らし合わせて新たな働き方を可能にするように科学技術の利用の加速化を希望するか否か。希望する場合にはそのような働き方の規制方法。 - 初めてのショック、新型コロナウイルス:インフォーマル性及び社会的保護の不備への取り組み
コロナ禍が明らかにした仕事の世界の巨大な脆弱性に対処するために行うべきこと。インフォーマル経済の公式(フォーマル)化という作業をスケールアップし、社会的保護を全ての人に適用する方向に決然と進む方法。 - 新型コロナウイルス:最も影響を受けている経済活動部門及び脆弱な集団にスポットライトを当てる
特別の支援と注意を要する経済活動部門及び労働者群。回復過程に男女平等への変化をもたらす課題と仕事の世界における若者の前進のための場を組み込むことができるか否か。 - 新型コロナウイルス:より良い立て直しに向けた協働
回復過程の中心目標として貧困の削減・撲滅、至上命題としての権利と社会正義を据える方法。
多国間協力がかつてないほど不可欠であるにもかかわらず、未曾有の課題に直面している時代において、国際社会が真に共通の目標を掲げて結束し、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの達成に再び注力する方法。
イベントの模様は全てサミットのウェブサイトで録画動画でご覧になれます。
地域別イベント
アラブ諸国
日 時 | 7月1日GMT7~10時(日本時間16~19時) |
式次第 |
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欧州・中央アジア
日 時 | 7月1日GMT正午~15時半(日本時間21~翌2日零時半) |
式次第 |
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アジア太平洋
日 時 | 7月2日GMT4~7時(日本時間13~16時) |
式次第 |
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アフリカ
日 時 | 7月2日GMT9~12時半(日本時間18~21時半) |
式次第 |
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米州
日 時 | 7月2日GMT15~18時(日本時間翌3日零時~3時) |
総合テーマ | 米州における生産的な回復とディーセント・ワーク |
式次第 |
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グローバルイベント
地域の日
ガイ・ライダーILO事務局長の全体報告に続き、前週に開かれた五つの地域別イベント(アラブ諸国、欧州、アジア太平洋、アフリカ、米州)の報告を各地域総局長が行いました。各地域の人々の声を集め、各イベントのハイライトをまとめた動画も上映されました。
日 時 | 7月7日GMT10~14時(日本時間19~23時) |
式次第 |
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グローバル・リーダーの日
ILO加盟国の国家元首や政府首脳、世界的に著名な使用者及び労働組合のリーダー、国連事務総長などの国際機関トップが、ウイルスの世界的流行と仕事の世界における課題及び機会について演説しました。日本労働組合総連合会(連合)の神津里季生会長の演説も行われました。
日 時 | 7月8日GMT8~17時半(日本時間17時~翌9日2時半) |
式次第 | プログラム |
ILO加盟国政労使の日
ILO加盟国の大臣、労使リーダーが集い、前日までのイベントを振り返り、ウイルスの世界的大流行の中で「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」を実行していく方法について話し合いました。日本の加藤勝信厚生労働大臣も19時台の開会セッションに登壇しました。討議ではウイルスの世界的大流行の初期段階において仕事の世界が即時に取り組むべき緊急課題や効果が立証されている対応策、より良い立て直しを図るプロセスに焦点が当てられました。
日 時 | 7月9日GMT10~14時(日本時間19~23時) |
式次第 |
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詳しくはイベントのウェブサイト(英語)へ---->
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