部門別会合

船員の募集・採用と定着、女性船員の機会促進部門別会合

 2006年の海上の労働に関する条約を採択した第94回ILO(海事)総会では17本の決議が採択されました。このうち、船員の募集・採用と定着に関する決議は、予測される適切な資格を有する船員の将来的な不足や、海事部門の持続可能な操業のためには新たな人材を引き寄せ、適正な昇進の道を確立することが重要である点などに留意し、グローバルな労働市場における船員の募集・採用、定着は複雑な問題であることを認め、この問題を検討し、適切な政策提言を行う政労使三者構成の専門家会議の開催をILOに求めています。また、女性船員の昇進の機会及び適切な労働・生活条件をさらに促進できるような措置の検討に資金・資源を最優先で振り向けるよう求める女性船員の機会促進に関する決議も採択されています。

 この2本の決議に応えるものとして開かれるこの会議では、労使代表各8人に加え、関心のある政府代表が参加して、仕事の未来に関する100周年記念イニシアチブにも留意しつつ、結論及び決議の採択を目指し、船員の募集・採用と定着に係わる機会と課題など、決議に挙げられている事項について話し合いを行います。

 討議資料として準備された『船員の募集・採用及び定着並びに女性船員の機会促進』と題する報告書は、船員の募集・採用を巡る状況を4章構成でまとめています。第1章「一般概説」で募集・採用、定着問題の背景として海事産業の概況を記した後、第2章「募集・採用」で船員の募集・採用に影響を与える要素を取り上げ、第3章「定着」で船員の定着に関連した課題を示し、第4章「女性船員:女性船員の機会促進」で女性船員の海事産業への参加に影響を与える要素を記しています。

 国際交易に従事する船舶における業務に就くことができる船員の供給量は現在、世界全体で164万7,500人と推定されます。女性船員はこの1%程度と見積もられます。2015年現在、職員(機関長、機関士、運転士などの指定職船員)については2.1%の不足が指摘されていますが、2025年までにこれは18.3%に上昇すると見られます。推定される将来的な船員不足は、有資格者を引き寄せるのに寄与し、現職船員が満足できるキャリアを確保する要素に取り組む必要性に光を当てています。

 船員が船上に留まる長さを決める可能性がある要素としては、昇進やワークライフ・バランス(仕事と生活の調和)、労働・生活条件、孤独などが挙げられ、船員不足に取り組むには船員を海上に留める要素や船を去るに至る問題に取り組む必要があります。

 海事部門における女性の雇用促進、女性船員の問題に関する啓発は「男女平等の達成と全ての女性及び女児のエンパワーメント」を目指す持続可能な開発目標(SDG)5に沿っています。ILOは仕事の世界における全ての労働者の機会均等・平等待遇の促進を通じて男女平等に関する任務を遂行しています。女性を海上のキャリアに引き寄せるには、公然とした権利侵害や隠された差別、体系的な障壁などといった、女性が船上における労働及び生活の中で直面する可能性がある課題に取り組むことが必要不可欠です。

 会議に関連するものとして、ILOは他に『The global seafarer: Living and working conditions in a globalized industry(グローバル船員:グローバル化産業の生活・労働条件・英語)』、『Women seafarers: Global employment policies and practices(女性船員:グローバルな雇用政策と慣行・英語)』、『The impact on seafarer living and working conditions of changes in the structure of the shipping industry(海運産業の構造変化が船員の生活・労働条件に与える影響・英語)』といった書籍も発表しています。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
船員の募集・採用と定着、女性船員の機会促進部門別会合