2019年4-9月 ILO駐日事務所インターンシップ修了者の声

Name: NK
Career direction: Anthropology of Development
Internship period: April 2019 – September 2019 (Five months)

インターンシップを始めたきっかけ

ILO駐日事務所でのインターンシップに応募したのは、国際機関はどの様に社会的な課題と向き合い、それに取り組んでいるのか、経験し知りたいと考えたからです。

とりわけ労働の専門機関であるILOのインターンシップに応募したのは、モロッコにおける調査がきっかけです。もともと途上国における教育開発や教育援助に関心があり、修士課程在学中に、ノンフォーマル教育(義務教育段階を中退・留年した子どもたちが通う「第二の学校」)の実践を行うアソシエーションで学生調査員としてフィールドワークを行いました。彼ら・彼女らが学校を去る要因はいくつかありましたが、中でも重要な位置を占めたものの一つが「親の仕事」です。生徒の家族への聞き取りでは、「日雇いの農作業で収入を得ていた私たちが病気になったために娘は学校に通えなくなった、インフォーマル労働であるため国からの保障を受けられなかった」、「私がもっと稼ぎの良い仕事を得ることが出来れば、息子がスーク(定期市)で働く必要はないのに」等の語りが何度も聞かれ、そのたびに教育をうける権利の保障は労働世界の在り方や社会保障の充実と不可分に結びついていることを強く認識することになりました。[写真:モロッコの週末市の様子]
 

このように身をもって知った社会的な課題を、学ぶばかりではなく具体的に改善するにはどうしたらよいのか。そのためにはどのようなことが出来るのか。修士論文を書き上げそのような思いを抱えて悶々としていた時、ILO駐日事務所のインターン募集を見かけ、応募することに決めました。

インターンシップでの業務


インターン期間中は、ILO本部から出される刊行物や新聞記事の翻訳・広報活動・イベントの運営補助・研修随行等様々な活動に携わりました。2019年は、ILO創設100周年やTICAD7、アフリカの協同組合研修10周年など様々なイベントが重なった年であり、業務の中でも広報活動やイベント運営の比重が大きかったように思います。特にTICAD7ではアフリカにおける若者の雇用をテーマにしたサイドイベント「Jobs4Youth」の準備に早い段階から携わることができ、資料作成やミーティング出席等コアな部分まで関わらせていただいたほか、広報活動の一環としてアフリカ諸国出身の若者数名に聞き取りを行い、「彼らにとってその国の若年雇用はどう見えているのか」に関する記事執筆も行いました。
[写真:TICAD7の会場にて]

インターンシップを通して感じたこと・考えたこと


インターンシップ応募の目的は、「国際機関はどの様に社会的な課題と向き合い具体的に取り組んでいるのか」という問いについて、実際に経験し知るというものでした。ILO駐日事務所で過ごした5か月間の経験からこの問いにもう一度立ち返ると、その答えは「国際機関の一員であるILOは、労働の世界に起こる様々な問題に対し、その解決の要である政労使三者が一堂に会して議論する場を提供することを重要な基盤として、取り組んでいる」ということなのではないかと思います。

そのことの重要性を最も強く感じたのは、ILO総会で「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約」が採択された直後のILO協議会の総会でした。「仕事の世界における暴力とハラスメント」が問題であるという共通認識はなされている一方、その捉え方や改善案について立場の違いが如実に現れる意見の応酬を見聞きし、労働問題はその性質上立場の異なる三者が重要に関わっていること、それゆえに具体的な改善を行うためにはまずその三者が集まり話し合うことのできる場を作ることが重要であることを実感しました。
 
大学から大学院まで社会人経験を経ずに過ごした私にとって、ILOでのインターンシップは自分自身の「仕事」について考える貴重な機会にもなりました。これまで学んで来た教育や労働、地域についての話が直結するような話題がそこかしこから聞こえ、立ち話でも昨今の労働問題や教育の話題に及ぶ、そんなオフィスに身を置ける日々は本当にワクワクするものであり、改めて自分自身の興味関心を確かめると同時に、現在の学びが仕事に結びつくことの楽しさをひしひしと感じました。また、ILO駐日事務所の方々や同期インターン生の方々からは、仕事の型や姿勢を大いに学びました。様々なバックグラウンドを持ちつつ志を近くする方々と出会えたことは、今後も大きな財産であり続けると感じています。

これからインターンシップをされる方へ


アフリカの国々や教育、労働問題に関心があり大学から学んできたものの、その学びと結びつく仕事の一つとしてある国際機関は、自分にとってものすごく遠く、応募するのにも勇気がいるような場所でした。しかし、実際に飛び込んでみると、5か月のインターンを通して見聞き出来たことや出会えた人々は、それまでの自分の世界を、また一つ、ググっと広げてくれました。国際機関で働くことに関心をお持ちの方には、是非ともお勧めしたいインターンです。最後にこの場をお借りして、貴重な経験を沢山積ませていただいたILO駐日事務所の皆様に、篤く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
 
[写真:初めて国連大学に足を踏み入れた日に撮った一枚]