ILOと持続可能な開発目標(SDGs)


ディーセント・ワークと「持続可能な開発のための2030アジェンダ」

2015年9 月25日、第70回国連総会で、「持続可能な開発のための2030アジェンダ(the 2030 Agenda for Sustainable Development)」が採択されました。これは、政府、市民社会、世界中の多くの一般の人々が参加して行われた3年に及ぶ集中的な交渉と対話を経て、193の国連加盟国が合意に至ったものです。

この「2030アジェンダ」は、2001年に国連で策定されたミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)の後継として定められた2016年から2030年までの国際的な目標です。このアジェンダは、経済・社会・環境という持続可能性の3つの側面を擁しており、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成状況を踏まえて策定された開発目標1から開発目標17までの17の持続可能な開発目標(SDGs)から構成されています。ILOが世界的な目標として掲げる「ディーセント・ワークをすべての人に」が、開発目標8としてその中に位置づけられています。
「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、人間と地球全体を中心に据え、仕事の世界を含め人類が直面する大きな諸問題に国際社会が共に取り組むための推進力となるものです。

ディーセント・ワークは持続可能な開発への鍵

17の開発目標(SDGs)の中の開発目標8は、「ディーセント・ワークと経済成長」とされています。推計によれば、世界の就業年齢人口の増加に伴い、2030年までに6億以上の新たな雇用を創り出す必要があります。これは、毎年約4000万の雇用を創出することを意味します。また、働いても十分な収入がないため、1日2ドルで暮らすことを余儀なくされている7億8000万人もの人々の生活を向上させる必要があります。

開発目標8は、「包摂的かつ持続可能な経済成長及び生産的な完全雇用とディーセント・ワークをすべての人に推進する」ことをめざしており、持続可能な開発の達成に向けたディーセント・ワークの重要性を示しています。



 
     

開発目標8

社会的保護の提供、強制労働と児童労働の撤廃、生産性の向上、若年雇用問題への取組み、中小企業と技能開発、等に関する項目別ターゲットによって補強される開発目標8は、世界中の人々や各国政府の社会経済的ニーズに対する不可欠な目標です。


 

ILOに関連する目標

ILOが直接主導するのは開発目標8ですが、ILO の活動は、それ以外の開発目標と項目別ターゲットにも反映されています。

2030開発アジェンダ:ILOの活動に関連する目標

ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)は、単なる目標ではありません。 それは、持続可能な開発の原動力となるものです。ILOの活動に関連する開発目標とターゲット(外務省仮訳)を以下に挙げます。ILOの活動と使命は、2030アジェンダ全体を前進する上で極めて重要です。










 

開発目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

1.1 2030 年までに、現在1 日1.25 ドル未満で生活する人々と定義されている極度の
貧困をあらゆる場所で終わらせる。

1.2 2030 年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の
男性、 女性、子どもの割合を半減させる。

1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施する。

1.4 すべての人がマイクロファイナンスを含む経済的資源について平等な権利を持つこと
ができるようにする。


 
 
 

開発目標2 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する

2.3 小規模食料生産者の農業生産性及び所得を倍増させる。

2.4 生産性を向上させ、生産量を増やすような強靭(レジリエント)な農業を実践する。
 
 
 

開発目標4 すべての人に包摂的かつ質の高い教育を確保し、生涯学習の
機会を促進する

4.4 2030 年までに、技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び 起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させる。

4.5 教育におけるジェンダー格差を無くし、あらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
 





 

開発目標5 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化
を行う

5.1 すべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。

5.2 人身売買など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。

5.4 公共のサービス、インフラ及び社会的保護政策の提供、ならびに各国の状況に
応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。

5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。
 

開発目標7 すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する



 



































 

開発目標8 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

8.1 各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる。特に後発開発途上国は少なくとも年率7%の成長率を保つ。

8.2 高付加価値セクターや労働集約型セクターに重点を置くことなどにより、多様化、技術向上及びイノベーションを通じた高いレベルの経済生産性を達成する。

8.3 生産活動や適切な雇用創出、起業、創造性及びイノベーションを支援する開発重視型の政策を促進するとともに、金融サービスへのアクセス改善などを通じて中小零細企業の設立や成長を奨励する。

8.4 2030 年までに、世界の消費と生産における資源効率を漸進的に改善させ、先進国主導の下、持続可能な消費と生産に関する10 カ年計画枠組みに従い、経済成長と環境悪化の分断を図る。

8.5 2030 年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の完全かつ生産的な雇用及び ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)ならびに同一労働同一賃金を達成する。

8.6 2020 年までに、就労、就学及び職業訓練のいずれも行っていない若者の割合を
大幅に減らす。

8.7 強制労働を根絶し、現代の奴隷制、人身売買を終らせるための緊急かつ効果的な措置の実施、最悪な形態の児童労働の禁止及び撲滅を確保する。2025 年までに児童兵士の募集と使用を含むあらゆる形態の児童労働を撲滅する。

8.8 移住労働者、特に女性の移住労働者や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進する。

8.9 2030 年までに、雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業を促進するための政策を立案し実施する。

8.10 国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険及び金融サービスへのアクセスを促進・拡大する。

8.a 後発開発途上国への貿易関連技術支援のための拡大統合フレームワーク(EIF)などを通じた支援を含む、開発途上国、特に後発開発途上国に対する貿易のための援助を拡大する。

8.b 2020 年までに、若年雇用のための世界的戦略及び国際労働機関(ILO)のグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)の実施を展開・運用化する。
 



 

開発目標 9 強靱(レジリエント)なインフラ構築、持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

9.1 経済発展と人間の福祉を支援するために、質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。

9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、雇用 に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。

9.3 小規模の製造業、その他の企業の、金融サービスやバリューチェーンへのアクセスを拡大する。
 







 

開発目標10 各国内及び各国間の不平等を是正する

10.1 各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に
達成し、持続させる。

10.2 年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に
関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。

10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、ならびに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。

10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。

10.7 秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
 
 

開発目標11 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する

11.2 すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する。
 
 

開発目標14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

14.4 漁獲を効果的に規制し、過剰漁業や違法・無報告・無規制(IUU)漁業慣行を終了する。

 
 

 

開発目標16 公正、平和で包摂的な社会を促進する

16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。

16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的・包摂的・参加型及び代表的な意思決定を確保する。

16.10 国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。

 
 








 

開発目標17 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

17.9 開発途上国における効果的かつ的をしぼった能力構築の実施に対する国際的な
支援を強化する。

17.13 政策協調や政策の首尾一貫性などを通じて、世界的なマクロ経済の安定を
促進する。

17.14 持続可能な開発のための政策の一貫性を強化する。

17.17 効果的な公的、官民、市民社会のパートナーシップを奨励・推進する。

17.18 開発途上国に対する能力構築支援を強化し、質が高く、タイムリーかつ信頼性の
あるデータの入手可能性を向上させる。

 

ILO本部サイトはこちらをご覧下さい。
国連文書 外務省仮訳はこちらをご参照下さい。
国連文書 原文はこちらをご覧下さい。