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2004 World Day for Safety and Health at Work emblem

仕事における安全と健康に関する決議

2003年第91回ILO総会にて採択

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仕事における安全と健康に関する決議

 国際労働機関の総会は2003年にその第91回会期として会合し、

 第6議題資料「仕事における安全と健康に関するILO基準関連活動」をもとに統合的アプローチにより一般討議を行い、

 1.   以下のような結論を採択する。
 2.  仕事における安全と健康に関するILO基準関連活動の影響力、一貫性及び妥当性の向上を目指し、ILO理事会に対し、次のことを求める。
(a)  2003年11月理事会で承認されれば、仕事における安全と健康に関する事項を第93回会期(2005年)の議題とする可能性があることに留意しつつ、仕事における安全と健康に関するILO基準関連活動を計画する際にはこれらの結論を適切に考慮すること。
(b) 現在及び2004〜2005年の事業の実施、2004〜2005年 の期間中に利用可能となる資金の配分並びに将来の戦略計画及び2006〜2007年事業予算等の準備にあたり、これらの結論を優先させるよう事務局長に要請すること。

仕事における安全と健康分野の
基準関連活動に関する結論−世界戦略

 1. 仕事における事故や病気の世界的影響、そして大規模な産業災害は、これによる人々の苦しみ、経済的コストから、国家および国際的レベルで長い間懸念されてきた。この問題の解決に向けあらゆるレベルにおいて多大なる努力がなされてきているが、それにもかかわらず作業関連の事故や病気により死亡する労働者の数は200万人にものぼり、世界的にも増加傾向にある。1919年にILOが創設されて以来、仕事における安全と健康はその中心的課題となり、今後もディーセント・ワークの目標を達成するための基礎的な必要条件であり続ける。
 2. 危害要因・リスクの予防と管理のため確立された措置に加え、新しい戦略と解決方法が開発され適用される必要がある。このことは危険物、機械、道具や手動操作などの既知の危害要因・リスクのみだけでなく、近年取り上げられるようになっている生物学的危害要因、心理社会的危害要因、筋骨格障害にも当てはまる。さらに、仕事における安全と健康は社会関係の本質的な部分であるから、国家もしくは世界的な社会経済的な変化に影響される。人口やその動態、雇用のシフト、仕事組織の変化、ジェンダーによる差異、事業所の規模・組織・ライフサイクル、技術発展の速さなど多く要因により、危害要因、暴露、リスクの新しいパターンが生み出される。これらの課題への適切な対応のため、それぞれの分野の知識、経験、好事例を参考にし、これらを最大限活用するべきである。安全と健康のための措置の目的は、安全で健康的な職場環境をつくり、維持することである。これらの取り組みによって、品質、生産性及び競争力を向上することも可能となる。
 3. 職場での事故や病気を防ぐのに効果的な法的、技術的手段・方法論・取組みはあるものの、実効ある国家産業安全保健システムを実施するためのハイ・レベルな政治的関与と、産業安全保健の重要性についての一般の人々の認識の向上が必要である。産業安全保健問題への取組みは、国際レベルでも国家レベルでも、まとまりがなく断片的であり、実効ある成果を生み出すほどの一貫性を欠いている。したがって、世界レベル、国家レベルそして企業レベルにおいて産業安全保健をより高い優先課題とすること、そしてすべての社会的パートナーに国家レベルで産業安全保健システムの継続的改善のための仕組みを開始・維持させることが必要である。ILOは、その三者構成主義と広く認知された世界産業安全保健の使命により、このような戦略を通じて仕事の世界に真の影響を与える力が備わっている。
 4. 国家における予防的な安全・健康文化の確立・維持と、産業安全保健マネジメントへのシステム思考の導入は、世界産業安全保健戦略の基軸である。国家の予防的な安全・健康文化には三つの要素がある。第一の要素は、安全で健康的な労働環境があらゆるレベルで尊重されることである。第二の要素は、定められた権利・責任・義務体系のもとで、安全で健康的な労働環境を守るために、政府、使用者および労働者が積極的に参加することである。第三の要素は、予防の原理が最優先事項とされていることである。予防的な安全・健康文化を構築し維持するためには、危害要因・リスクの概念やその回避・管理方法についての一般の人々の認識、知識、理解を高めるべく、すべての利用可能な方法を活用しなくてはならない。最近、企業レベルの産業安全保健マネジメントにおいてシステム思考が発展し、ILO労働安全衛生マネジメント・システム・ガイドライン(ILO−OSH 2001)が生まれた。この考え方や関連する手法をもとに、世界産業安全保健戦略では、国家産業安全保健システムの管理にのシステム思考を取り入れるよう提唱する。

仕事における安全と健康を推進するためのILOの行動計画

T. 推進、啓発、提言

 5.

予防的な安全・健康文化の育成及び推進は、産業安全保健のための活動を長期的に改善する重要な基盤となる。このために複合的なアプローチを取ることができるだろう。予防的な文化の推進はリーダーシップの問題が大いに関わるので、ILOは様々な取組みについて提言者の役割を果たさねばならない。したがって、ILOは以下のことを行うべきである。

  • 産業安全保健の重要性についての認識を広め、労働者が安全で健康的な労働環境を持つ権利を促進することを目的として、毎年開催される国際的なイベントまたはキャンペーン(世界の日または安全・健康週間)を承認すること。このような取組みに当たっては、1984年以来4月28日に開催されている労働者の記念イベントを尊重すべきである。

  • ILOとその産業安全保健関係文書への注目度を高める方法を探究すること。

  • 国家レベル及び企業レベルで強力かつ持続可能な予防的安全・健康文化を達成するための最も効果的な方法として、「健全な産業安全保健管理」というコンセプトの推進に重点を置く世界キャンペーンを実施すること。

  • 予防的な安全・健康文化を推進するため、国際会議を戦略的に利用すること。たとえば、ILOと国際社会保障協会(ISSA)が共同開催する3年に1度の産業安全保健世界大会(World Congress on Occupational Safety and Health)など。

  • 労働安全衛生マネジメント・システム・ガイドラインをILO内で実施すること。

  • 政府最高機関による産業安全保健計画の創設を奨励すること。

U ILO文書

 6. 産業安全保健を推進する枠組みを定める新しい文書の作成は、優先的に進められるべきである。この文書の主たる目的は、産業安全保健を国家的課題の中で優先的に扱われるようにし、政治の関与を強め、そして三者構成主義のもとで予防的な安全・健康文化とマネージメント・システム手法により産業安全保健の改善を目指す国家戦略を発展させることである。この文書は規範的であるよりむしろ推進的な内容を伴う包括的文書として、現状に適合する既存文書の影響力強化に役立つだろう。法制、支援、執行など国家産業安全保健制度の継続的改善にも寄与すると考えられる。このように実用的、建設的文書は、とりわけ以下のことを促進すべきである。◇安全で健康的な労働環境への労働者の権利、◇政府、使用者および労働者のそれぞれの責任、◇産業安全保健についての政労使三者協議メカニズムの確立、◇職場レベルの危害要因・リスクの評価と管理の原則に基づく国家産業安全保健計画の策定・実施、◇予防的な安全・健康文化を強化する取組み、◇すべての関係するレベルにおける労働者の参加と代表。特に、現存する文書の規定との重複を避けるるよう努めねばならない。そして、産業安全保健に関する経験や好事例の交流を可能にするため、達成された成果や進歩に関する報告制度を整えるべきである。
 7. 既存文書の改正に関しては、1963年の機械の防護に関する条約(第119号)及び1963年の同勧告(第118号)の改正、そして1990年の職場における化学物質の使用に関する条約(第170号)の付属議定書を用いる、統一的方法による次の条約・勧告の改正、すなわち1919年の鉛中毒に対する婦人及び児童の保護に関する勧告(第4号)、1919年の燐寸製造における黄燐使用の禁止に関する1906年のベルヌ国際条約の適用に関する勧告(第6号)、1921年のペーント塗に於ける白鉛の使用に関する条約(第13号)、1971年のベンゼンから生ずる中毒の危害に対する保護に関する条約(第136号)及び1971年のベンゼンから生ずる中毒の危害に対する保護に関する勧告(第144号)の改正を優先すべきである。
 8. ILO文書と現実問題との関連性を高める観点から、人間工学的危害要因や生物学的危害要因の分野での新しい文書の作成が最優先されるべきである。また、新しい機械装置から防護することを目的とする行動規範の作成も重視されるべきである。さらに、職場関連の心理的危害要因についても、今後のILO活動として考慮されるべきである。
 9. 産業安全保健は、その技術が絶え間なく進化する領域である。したがって、高位の文書の内容は、重要な原則に絞るべきである。古くなってしまいやすい事項は、行動規範や専門的ガイドラインという形式で詳細な指針を定めるべきである。ILOは、行動規範や専門的ガイドラインを体系的に更新するための方法を開発すべきである。

V. 技術協力

10. 発展途上国及び移行国が時宜を得て産業安全保健の能力および計画を強化できるよう、専門的助言と財政的援助を与えることは重要である。このことは急速に変化する世界経済と技術のもとで特に重要である。技術協力計画の作成に当たっては、援助が最も必要とされ、そして継続的に活動することが明白に約束されている国々を優先すべきである。この点で、国家・地域・世界レベルのニーズ評価から始める技術協力プロジェクトの作成および実施は効果的である。これらのプロジェクトは地域レベルで他の国々にも波及する乗数効果を持つことが望ましく、また、長期にわたり自己継続されるようにすべきである。ILOは加盟国政労使とともに、支援国、支援団体からの援助と新たな支援主体の開拓、そして地域内の産業安全保健専門家の拡充に特別の努力を傾けるべきである。技術協力プロジェクトでの経験は、特に地域レベルで広く共有されるべきである。
11. ILOが近年進めている国家産業安全保健計画の作成は、産業安全保健システムの改善を図る政労使三者の取組みを統合する効果的な方法である。国家元首、政府、議会など政府の最高機関によって国家産業安全保健計画を承認し確立することにより、国家の産業安全保健の能力強化と、国内及び国外の資源の導入に及ぼす影響は大きいだろう。計画の策定と実施に当たっては、使用者、労働者、関係するすべての政府機関の積極的参加を確保することが肝要である。そして計画は、それぞれの国でこれまで達成された成果と現在のニーズをふまえ、国家産業安全保健のシステムと能力と運用の改善をめざして発展していくことが望まれる。
12. 産業安全保健計画は、公式に発表され文書化された国家政策もしくはハイ・レベルの約束と構想、国家産業安全保健の概要・目標・指標・説明責任・資源の開発をまとめた国家戦略、政府のリーダーシップなどの重要事項を取り扱うべきである。このような計画によって、国家政府内の組織とその産業安全保健に関わる監督・執行制度、産業安全保健支援体制、産業安全保健専門の使用者団体・労働者団体、情報センターとネットワーク、横断的な教育・訓練制度、調査・分析体制、実績評価と奨励措置を持つ労働災害・職業病補償・リハビリテーション制度、自発的で三者構成主義による計画と体制、そして政策提言と宣伝活動は強化されることとなろう。
13. 国家産業安全保健計画の創設と実行を助ける手法を発展させていくためには、政労使による進捗状況評価の指標となる適切で実用的な入力・加工・出力情報の開発、そして定期的な見直しと、将来的な労災・職業病予防活動の重点の確認が考慮されるべきである。
14. ILOの産業安全保健分野の現地体制は、加盟国政労使のニーズへの対応を改善するために、その処理能力と専門性を強化すべきである。また、利用可能な各国データがプロジェクトの計画、開発に向けて分析され有効に用いられるようにするため、ILOの本部と現地事務所とのコミュニケーション手段を合理化すべきである。

W. 知識の開発、管理、普及

15. 産業安全保健の分野において政府、使用者および労働者が必要とする知識を開発・加工・普及する適切な能力は、優先事項を識別し、一貫性のある妥当な戦略を発展させ、国家産業安全保健計画を実行するために必要な前提条件である。そのような知識には、国際基準、国家法制、技術指導、方法論、事故・疾病統計、好事例、教育訓練教材、危害要因・リスク評価データ(いかなる媒体、言語、形式によるものでもよい)がある。ILOは、この分野での加盟国政労使の能力開発を支援する方法を継続的に改善し、彼らの具体的なニーズに応えていくべきである。たとえば国際労働安全衛生センター(CIS)の各国協力センターを設立・強化し、さらにはこれらをインターネットで結んで地域的ネットワーク、そして世界的な危害要因警告システムの支柱となる世界産業安全保健情報交換制度を確立することである。
16. ILOは、意思決定および実行のための基礎として、できる限り他の団体と協力して、優先課題の調査研究を強化すべきである。
17. ILOの産業安全保健情報を必要とするすべての人々が、CD-ROMやインターネットなどの情報提供手段・ネットワークを活用して、これに自由にアクセスすることが認められるべきである。さらに産業安全保健の重要な文書や資料を現地語に翻訳するために加盟国政労使を援助することは必須である。ILOは、情報センターなどのネットワークを産業安全保健のより広い情報ネットワークー質の高い多言語の産業安全保健情報・データベース、特に産業安全保健の法制、科学技術指導、教育訓練教材、好事例などの情報を提供するためのものーに統合するために、他の関係組織や機関と協力すべきである。安全保健に携わるすべての者の間で成功例やその方法を共有することは、新しい問題に対しても古くからの問題に対しても、実用的な予防対策開発を促進するための最も効率的な方法である。こうした知識へのアクセスは、ILOにとっても、重要な傾向を確認し、適切に文書を更新していくのに役立つものとなろう。
18. ILOは、労災事故・職業病データの収集・分析のための調和のとれた方法を開発するため、国際的、国家的取組みに貢献すべきである。そのための手法も、加盟国における情報の収集・分析・処理・提供のための技術、そして計画、優先事項の絞込み及び決定過程での信頼できるデータの使用に役立つように考えられるべきである。
19. 学校その他の教育訓練機関などを通じ、すべての者に対し産業安全保健に関する認識を向上させるための教育をすることは重要である。さらに管理者、監督者、労働者・労働者代表、そして安全と健康に責任を持つ政府職員などの人々に対しては、一般向けよりも高度の産業安全保健の教育訓練が必要である。
20. ILOは、産業安全保健の重要事項の指導員訓練を中心に、実用的で使いやすい教材と方法を開発すべきである。さらにILOは、その訓練センターをはじめとする現地体制での産業安全保健の情報提供・訓練能力を改善すべきである。ILOは、すべての労働者・労働者代表および使用者に届く、開発途上国の状況に合った産業安全保健訓練体制の確立を支援すべきである。訓練は、予防活動を支援し、実用的な解決策を見出すことに重点を置く。弱い立場にある労働者やインフォーマル経済の労働者には特別の配慮がなされるべきである。ILOの零細企業の作業改善訓練パッケージ(WISE)は、多くの国で用いられ、企業に具体的な改善成果をもたらしている。このWISEプログラムその他の訓練教材はさらに改善され、安価で広く利用できるようにすべきである。産業安全保健の教育カリキュラムは、適切なレベルで開発が進められるべきである。

X. 国際的協力

21. 産業安全保健関連の様々な活動で国際機関、特にWHOとの協力が成し遂げられている。これらの協力活動は、ILOの価値観や基本理念が産業安全保健の技術的な基準・方法の発展の基礎として用いられるようにするためにとても有効である。これにより、ILOは、世界的なネットワーク・提携関係の中心に置かれ、このネットワーク・提携関係は、ILO自身の専門知識の通用性の維持と他機関への影響のために重要な役割を担う。それはまた権限の補完と取組みの重複回避に非常に有効であり、さらに、労使の専門家がその見解を表明し、ILOの権限外の事項に対して影響を及ぼす機会を与える。
22. 産業安全保健におけるILOの役割の注目度、円滑度、影響度をさらに高めるために、活動の定期的見直しとその重要事項や結果についてILO理事会への報告が考慮されるべきである。このような協力はさらに奨励され強化されるべきである。特に異なる組織間で共通の関心・権限が存在し、協力活動によって得られる利益がそのままILO加盟国政労使の利益となるようなところ、たとえばILO/WHO合同産業保健委員会、国際化学物質安全計画、多機関間化学物質適正管理計画(IOMC)、国際産業保健学会(ICOH)などの活動である。国連環境計画、政府間化学物質安全フォーラムおよびIOMCによって進められている化学物質管理の統合のための戦略的アプローチを開発するための取組みに、ILOは貢献し、そして使用者団体および労働者団体の積極的参加を確保し、その意見や利益が適切に考慮されるようにすべきである。このプロセスの最終的な結果は、ILOの意思決定機関に対して審議のために説明されるべきである。

一般配慮事項

23. 世界戦略の開発と実行にあたり、ILOは特に支援を必要とし、産業安全保健能力の強化を望む国々に関して特別の努力をすべきである。このほか、各国において事業所レベルの労働条件改善戦略の一部分として考慮することのできる施策には、以下のものがある。これらの施策には、中小企業、インフォーマル経済の事業、若年者、障害者、移民、自営業者など弱い立場の労働者の労働条件改善のためのものが含まれる。◇法的義務の適用範囲の拡大、◇執行・監督制度の能力強化と、その産業安全保健分野の技術指導や支援への集中的投入、◇財政的奨励措置の使用、◇基礎医療システムと産業安全保健との関係強化の取組み、◇強力で持続性のある予防的安全・健康文化を築く、有効な、そして継続性のある手段として、学校カリキュラムその他一般教育制度への危害要因・リスク・予防という考え方の導入(教育を通じた予防)。これらのほか、ジェンダー特性による要因を考慮することも、産業安全保健基準その他の文書、マネジメント・システムおよび実践を考える際に必要となろう。また、ILO事務局内でも、他のILO活動における産業安全保健の主流化が図られるべきである。さらに、統合的アプローチは、ILO活動の他のすべての分野に漸進的に適用されていくべきである。最後に、この活動計画を実行するための適当な資源配分の問題に適切に配慮すべきである。


最終更新日:2004年4月23日 作成者:TT 責任者:TT